【専門家の先生に聞きました】『たくさん転ぶことが良いんです。』 知らぬ間にこどもに失敗させない親になっていませんか?

【専門家の先生に聞きました】『たくさん転ぶことが良いんです。』 知らぬ間にこどもに失敗させない親になっていませんか?

2023/12/05

今回お話をお伺いしたのは、筑波大学教授 坂入洋右先生です。
幼児期から運動をすることの大切さや、運動を通じての子どもたちの体や心の成長についてお伺いしました。

 

坂入洋右先生
坂入洋右先生
筑波大学体育系教授、博士(心理学)
公認心理師、臨床心理士、スポーツメンタルトレーニング指導士、
自律訓練法専門指導士、
日本心理医療諸学会連合前理事長、
日本自律訓練学会理事長、
日本マインドフルネス学会副理事長

 

 

ロディは『転びのワクチン』たくさん転ぶことが良いんです。

ロディに初めて触れる子どもたちには、最初にたくさんの『安全に転ぶ練習』をしてほしいです。
これまでの運動や体育では『うまくなろう、失敗をしないように、もっと頑張って!』と、親も先生も上手にできる方法を“教える”教育がメインでした。それだと運動することが得意ではない子どもや、なかなか上手にできない子どもたちはぜんぜん楽しくなくて、どんどん運動が嫌いになってしまいます。
逆に『できるだけたくさん失敗をしようね』という声かけをすると、結果的に上手にできるための近道であるということも分かってきています。

実際に、Gボール(バランスボール)の上でバランスをキープする課題を習得するプロセスを調査した研究では、上手に乗れる方法を教えられた子どもは、確かに乗ることはできるのですが、ちょっとした外的な要因にとても弱く、バランスをキープすることができなくなってしまうのに対し、たくさん失敗して、たくさん転んで、自分なりのやり方でバランスする方法を身につけた子は、どんなに揺らされたり、グラグラしたりしてもなかなか落ちずにバランスを保つことができる、という結果がでました。

つまりトップダウン(成功する方法)で教える指導から、ボトムアップ(多様な失敗の経験をたくさんすること)で教えていくような指導に転換をし、子どもたちに伝えていくことが求められてきています。

『安全に転ぶ練習』

ですので、ロディに初めて触れる子どもたちには最初にたくさんの『安全に転ぶ練習』をしてほしいです。うまく乗るためにはどうしたらいいかを自ら学んでいくような見守りがとても重要だと思います。
例えば感染症の予防接種も病気にならないためにワクチンを打ちますよね。
ロディも『安全なワクチン』というような感覚です。
本来は山や川や草原など自然のなかで遊び回るのが子どもたちにとっては一番良いのですが、実際にそれをすることはなかなか危険もありますし、毎日それをするというのは現実的に難しいです。
なので自宅でできる『安全な危険』というような意味合いで、ロディに乗ってたくさん転ぶ、上手にバランスを取るにはまずは横に倒れてみて、前に体重をかけてみる、怖さや危険から身を守る術を身につけることでバランス感覚が自然に身についていくということです。

 

これからの子どもたちに大切なのは『教科書には書いていないこと』

昨今では『非認知能力』を高める教育に注目が注がれています。メディアでも取り上げられているこの『非認知能力』という言葉は、学力などのテストで測れる能力以外の『生きるための力すべて』のことを指しています。
それを一番高められるのが体育だと私は思っています。
体育という教科では、教科書の中身である“正解”を学ぶことが重要なのではなく、子どもたち自身が『自分の心と体の使い方』を探究していくことが重要だと思っています。
それは子ども時代だけに限らず、生きていく上で一生必要なことですよね。
バランスボールやロディを使って体の使い方を身につけていくことは、非認知能力を高めるうえで、とても効果的だと感じています。

今の時代、正しい答えや情報を探そうと思ったらインターネットを通じてAIや ChatGPTなどで簡単に何でも見つけることができるようになってきました。
しかし、人間の赤ちゃんに例えると、赤ちゃんは何も教えられずとも寝返りをし、
ハイハイをし、立ち上がり、歩き、・・・と、さまざまな経験を通して成長していくのと同じで、自らの力や考えで動いていく、ということがこれからの時代とても大切なことになるでしょう。

 

運動をしたあとの心の変化

幼稚園や小学校で使っている「こころのダイアグラム」というシートがあるのですが、運動をする前後の子どものメンタルのコンディションの変化を見ることができます。

こころのダイアグラム


▲こころのダイアグラム 

幼稚園に毎朝子どもたちが来たときに、今の自分の気持ちはどこにあるのかシールを貼ってもらいます。その後体操をして軽く体を動かすのですが、体操が終わったあとに再度今の気持ちを聞いてみると、最初は少しイライラしたり緊張していた子どもも、体操をした後にはリラックスしたり、イキイキした活動に適したところ、上向きなところに気持ちが上がってきます。

子どもたちのメンタルコンディションの変化

これをロディに置き換えて、例えばご家庭での運動として、また幼稚園での体操の用具としてロディを使ってみても、おそらく同じような効果があると思います。

運動をすることは大人にとってももちろんそうですが、子どもたちのメンタルコンディションの変化を知る(量る)ためにもとても大切なことです。
自分の今の気持ちを知るバロメーターにもなりますし、イキイキとした上向きな状態になる方法を子ども自身が見つけることができますからね。
お友達と喧嘩をしてしまって、嫌な気持ちになったり、怒られてしまって嫌な気分になったり。でもロディに乗って遊んでみたら気持ちがスッキリしてきた。なにか体を動かしたらスッキリした。
そういう子どもたちの経験があると、今度また何か嫌なことがあった時に、自分で解決する方法がわかってきますよね。それがとても大切です。

 

上下動にはリラックス効果がある!

リラックスをするためには首・肩・腰まわり(体幹)を柔らかくほぐしていくことが重要で、どうしたらほぐせるかというと、一番良い方法は肩に力を入れて耳の近くまで持ち上げて、一気に落とす、という動きが一番です。

バランスボールに乗って上下に揺れる動きにも同じような効果がありますし、ロディも同じように座って上下動をすることでとってもリラックスすることが出来ます。
人は縦揺れをとても気持ちよいと感じる傾向があります。
乗馬しているときに気持ち良いと感じるのと一緒で、上下の縦揺れが良いんです。
人間は上半身をほぐすことで気分が良くなり気持ちよさを感じるので、バランスボールやロディに乗ってはずんで上下運動をすることで自然とリラックスをすることができると思います。

 

ロディに乗ってはずんで上下運動をすることで自然とリラックスをすることができる

我が子のために親たちができること

最初にもお伝えしましたが、それはやはりたくさん『失敗をさせること』、そしてそれを『見守ること』ですね。
自宅にロディがいたとしたら、まずうまく乗る方法を教えるのではなくて、安全に転ぶ練習をさせることです。
いろんな転び方をしてみよう。転び方が上手だね、すごいね。その転び方いいね!と言ってあげられると、それは一般理論より経験データを重視する新しいサイエンスに基づいた指導です。
子どもたちにとって大事なのは、上手にできる唯一の方法を身につけることではなくて、様々な経験を通して自分の心と体を自在にコントロールできるようになることなので、転んでも、転んでも一緒に笑っていろんな転び方ができたねーと褒めてあげてください。

ロディの良いところはバランスを保持する能力を育てるだけでなく、崩れたバランスを戻す力、『バランスの復元力』を高めてくれるところです。またバランスが保持できなかったとしても、そこから安全に崩れる方法を経験することができるのも大切なことです。
ロディは色々な動きのバリエーション、乗り方、転び方を経験できるということが大きなポイントですね。

転んだ時にすぐに手が出て自分を支えることができる力を身につけておくことが必要

転ばない方法を子どもたちに教えるだけでは、いざ現実世界で転んでしまったときに大きな怪我に繋がってしまう可能性があります。
それよりは、転んだ時にすぐに手が出て自分を支えることができる力を身につけておくことが必要です。
大きな怪我をしない子どもに育てるためにも、いろいろな転び方のデータを子どもたちにインプットさせておくことがとても大切です。

子どもたちに『安全に転ぶ練習』をたくさんさせてあげてください

ぜひ、親御さんはまずは子どもたちに『安全に転ぶ練習』をたくさんさせてあげてください。
もちろん子どもを支えてあげられるように、手の届く距離でいることは必須ですが、いい距離を保ちつつ見守ってあげてください。 


子どもたちの主体的で自立的な学びを促すためには、保護者・教師・指導者側の「見守るスキル」が必須である。
見守ることによって、子どもたちは自分の力で自律的に伸び、学ぶことそのものを学んでいく。
危ないときには助けてあげられる、守ってあげられる適度な距離で、優しく熱心に見守るスキルを身につけることが大切である。
子どもたちは、優しく熱心に見守られているという安心感があってこそ自律的に成長していく。「見守るスキル」は、子どもたちが成長するために今は何が必要なのか、逆に阻害するものや危険はないか、そういったことを正しく認識できるようになるための能力でもある。

坂入洋右 著書『身心の自己調整』こころのダイアグラムとからだのモニタリング
11章 教育(子ども)での活用より


こどもって『転ぶ』ととても楽しくて、ついつい笑っちゃうんですよ

こどもって『転ぶ』ととても楽しくて、ついつい笑っちゃうんですよ。
親御さんがまずロディに乗って、転んで見せてあげるのもいいですね。
大人がロディに乗ると更に難しくて、転びやすいですからね。

安全に安全にと危険因子を取り除こうとせず、安全に転べる道具、転びのワクチンとしてロディやバランスボールを使っていくことは子どもたちの体にとっても心にとっても良いことだと思います。

ロディは乗り方も転び方もひとりひとり違って良いんです。
上手な乗り方も、転び方も正解は1つではないです。

これからの時代を生きていく子どもたちに、ロディを通じて、運動を通して、自分にとってのやりかた、正解を見つけていってもらえたらと思います。


坂入洋右先生著書 『身心の自己調整』 

坂入洋右先生著書
『身心の自己調整』
こころのダイアグラムとからだのモニタリング 


【ロディとは】

唯一無二のバランスボールトイRODY( ロディ)

1984年214日、ロディはイタリア北部のオソッポ村にある「レードラプラスティック社」で誕生しました。
馬をモチーフに、バランスボールテクノロジーを応用して作られた乗用タイプのバランスボールトイです。

子どもたちは誰に教えられることもなく、自然とまたがって活発に遊ぶことができます。
ただ可愛いだけでなく遊びながら運動神経やバランス感覚を養うことができ、その姿、形も乗りやすいように研究されています。


 

 

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