今回のコラムでは、日本だけでなく世界における体育・スポーツによる教育を専門に研究されている日本体育大学教授の岡出先生から、子ども時代に行う運動・スポーツの教育的な意義やフィジカルリテラシーという考え方などについてお話を伺いました。
岡出美則先生
スポーツ教育の専門家
日本体育大学 スポーツ文化学部長 / 教授 博士(教育学)
大人たちのフィジカルリテラシーが子どもたちを成長させる!
今回は、子ども時代にさまざまな運動を経験することの大切さと、日本の体育・スポーツ教育分野において、その価値が高まってきているフィジカルリテラシーという考え方についてお話をしたいと思います。
ところでみなさんは『フィジカルリテラシー』という言葉を知っていますか?
日本のスポーツ振興や学校体育に関する施策を実施しているスポーツ庁や、様々なスポーツ団体が加盟している日本スポーツ協会さんの取り組みでも取り上げられていて、体育・スポーツの分野で今注目されている言葉の1つです。ただ、その名称だけが先行してしまって、本来の意味が伝わっていないという側面もありますので、この『フィジカルリテラシー』について、少し説明をさせてください。
イギリスの大学教授であるマーガレット・ホワイトヘッド先生が、身体的な要素にとどまらず心理的な要素がその中に含まれているという考え方や、身体は何かを達成するための道具ではなく、 自分の存在価値を高めてくれるものとしてとらえよう、ということを1990年代に入って提案したことをきっかけに『フィジカルリテラシー』という言葉が一種のムーブメントのように英語圏の国々を中心に広がってきました。
「生涯を通じて、豊かな生活をおくるために身につけておくべき、身体領域を中心とした技術や知識」として、『フィジカルリテラシー』という言葉の概念が広がってきています。
運動を通じて育つことがたくさん!
体育では、体を鍛えることやスポーツがうまくなることがその役割のように思えてしまいます。
でもそうではなく、『フィジカルリテラシー』というコンセプトのもとで、運動やスポーツを通じ、心理面や社会性などさまざまな要素を育てる、という体育の新しい意義を示すことで、子どもたちのより良い心の成長や社会的な学びに貢献するということが目標にされてきています。
『自分のことが好きになる。』
『自分に自信をもつ。』
『自分の感情をコントロールできるようになる。』
『相手のことを考えることができる。』
『相手の立場にたてる。』
『自分で自分の感情がわかる。』
『自分の長所がわかる。』
これってどれも人が生きていくうえで、とても大事なことだと感じませんか?
子どもたちにとって、運動やスポーツを通して様々な課題に出会い、ひとつひとつ対処していくことは、生涯にわたって暮らしていくためのとても大切な経験です。
運動・スポーツを通して学ぶ『スポーツ教育』という分野は、日本よりも海外の方がさらに充実した取り組みがされています。
例えばカナダでは、学校に限らず、家庭や地域コミュニティ、そしてスポーツクラブなどでも、子どもたちの年齢・学齢に合わせたスポーツ教育が受けられるようなシステムになっていて、それに関わる大人の人たちもしっかりと『フィジカルリテラシー』を身につけておくことが求められています。
日本だけじゃない。海外でも注目の心を育てる運動との関係
また地域の特性に合わせてスポーツによる教育を活用しようとする取り組みも見られています。
例えばミャンマーやボスニア、カンボジアなど国の内外で紛争・戦争のあった地域では運動やスポーツで健康になることだけでなく、身体を動かすことを楽しみ、また仲間と豊かに関わり合って仲良くなることを目指しています。
また南アフリカではダンスをしながら手を洗う内容の歌を歌うなど、体育と音楽(ダンス)、公衆衛生とを絡めたプログラムが展開されているそうです。
子どもたちにとって大切なのは、スポーツがうまくなることよりも、体を動かすことが楽しい!思わず体を動かしたくなる!仲間と身体を動かすとワクワクする!という感覚に触れることです。
そのためには子育てをしている保護者の皆さんが、子どもたちが体を動かすための環境や時間を作ってあげることが大切です。
日本でもこうした考え方が普及して私たち大人もフィジカルリテラシーを身につけることで、子どもたちの運動・スポーツを通した心と身体の成長に積極的に関わっていくことを期待しています。
ロディで遊ぶことで自然と身につく感覚は…!?
ロディやバランスボールなどで自由に遊ぶことは、このさまざまな状況に対応する能力、コーディネーションを身につけるのにとても有効な方法です。
たとえばロディを押してみます。
どれくらいの力で押したら倒れてしまうのか、力を調節するという感覚が学べます。
次はロディに座って跳ねてみます。
どのくらいの力をロディに加えたら、どのくらいのスピードでどのくらいの高さまでバウンドすることができるのかを経験することができます。
ロディの遊び方は自由で、こうやって遊ばないといけないと言う決めつけは必要ありません。子どもたちは、訳も分からず遊んでいるように見えて、実は自分の中でこうしたらこういう動きになるという予測を繰り返しています。
つまり自分がどのようにアプローチしたらどのような結果が生まれるかを試行錯誤しながら、体の経験値を挙げていくことで、さまざまな状況に対応する能力、コーディネーションを身につけているんです。
これからを生きる子どもたちへ
今は自己肯定感の低い子どもと高い子どもと二極化しているように思います。
何をやっても無駄。どうせだめ。苦手だから。めんどくさい…。
そんなふうに思ってしまう子どもたちが、ここで失敗しておくことで次は必ずうまくいく!今はダメでもいいからどんどんチャレンジしよう!そんな気持ちに変わっていけるような雰囲気を作っていきたいです。
世の中には分からないことを分からないと言えない子たちもいます。
いつでも自分の気持ちを素直に表現できる、それが大切ではないでしょうか?
誰もが世界で活躍していく時代で、いろいろな人種、いろいろな人、いろいろな個性があって当たり前で、様々な考えを持つ人と一緒に関わって生きていく時代です。
そこでは失敗しようが何しようが、何でも試してみる。やってみよう。という前向きな気持ちが持てることが大切だと感じています。
最初は出来なくてもいいんです。初めてのことはできなくて当たり前。
その中で小さな成功体験を積み重ねていくことが大事。
ロディで遊ぶことは、自分で試行錯誤する中で、「あ、うまく乗れた」「もっとうまく乗れた」「こんなことができるようになった」という成功体験になるはず。
そして、選択肢を自分で広げていけるということも大事です。
これがダメなら次はこれ、という風に1つのことにとらわれず、あれもあるね、これもいいね、と色々な方法を自ら見つけていけることも大切だと思います。
この企画のお話しをいただいた際にロディを1匹大学に届けていただいたのですが、それを学内で持ち歩いたり、授業に持って行ったりしていたら、学生たちから『これで子どもの頃遊んでいました!』『なつかしい!』という声がたくさん聞かれました。
その学生たちがちょうど18才〜20才くらい。
2024年はロディ生誕40周年の節目ということもお聞きして、ロディで育ってきた子たちが今度は親になっていく、という歴史を感じています。
最近は大人があまり体を動かさない傾向がありますが、保護者の皆さんは子どもたちの小さな成功体験を見逃さないように、親子で一緒になって楽しく体を動かしていってほしいです。
きっとそれが子どもたちの心の成長や自信にも繋がっていくことでしょう。
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